「裂織り(さきおり)」は、佐田岬半島に古くから伝わる独特な織物で、使い古した木綿の布を細く引き裂き、緯(よこ)糸にして織り込んだ布のことをいいます。緯糸に使われる布の色や柄によって様々な模様が生まれ、手織りの温かさと素朴さを併せ持った独特の風合いが美しい、一つとして同じもののない布が織り上がるのです。 裂織りによって織られた布は汗をよく吸って夏は涼しく、冬は風を通さず温かく、また非常に丈夫なことから日常着や仕事着の布地として広く使われていました。三崎ではこの裂織りで作られた服を「オリコ」と呼び、山仕事用や室内着として、近くまで外出するときに着るちょっと改まったもの、海女が着るもの、子供用まで、形も様々で用途に合わせて工夫がされた、誰でも持っている着物でした。しかし、次第に軽くて丈夫な生地が簡単に手に入るようになり、山での作業も機械の普及で背中に物を背負うことがなくなり、昭和40年頃を最後にオリコは姿を消してしまったのです。そのオリコの魅力と裂織りの技術を保存継承していくために生まれたのが「佐田岬裂織り保存会」で、大佐田の廃校になった小学校に「オリコの里 コットン」を設け、古いオリコの収集保存や機織り体験の実施、現代風の作品づくりなどの活動を行っています。 裂織り体験は約2時間で、テーブルマットやコースターなどの作品をつくることができます。7mmくらいの幅に裂かれた木綿の布を巻き付けた樋(ひ)を、上下に互い違いに分かれた縦糸の間に通し、筬(おさ)でしっかりと手元に緯糸を寄せます。足もとのペダルを踏み替えて縦糸の上下を替えて、反対方向から樋を通し同じ作業を繰り返します。縦糸と緯糸の組み合わせ方によって生まれる模様は一つとして同じものはなく、樋を一回通すごとに世界に一つだけの織物が仕上がっていくのです。無心に手を動かしていると、布一枚織るにもこれだけ手がかかっていることを感じ、物を大切にしてきた昔の人の心を感じることができるような気がします。「オリコの里」では失われつつある技術と、物を大切にする心を甦らせ、自分だけの作品をつくり出せる貴重な体験ができるのです。
昭和30年代のお祭り 法被の代わりにオリコを着てお祭りに参加する人たち。この頃は誰もが日常的にオリコを着ていた。保存会の小林さんもこの写真の中に写っている。
今回、ご紹介した 「オリコの里 コットン」 は、佐田岬リゾートから岬方面へ約16km、車で約20分