10月の終わりから11月中旬にかけて、霧島は紅葉の盛りを迎えます。他の木々に先駆けて真っ赤に染まるヤマウルシ、黄色から茶色へと色を変えるミズナラ、童謡にも歌われ、紅葉の代表格であるカエデやモミジの赤・・・。山々は晩秋の冷涼な空気に包まれ、今年最後の彩りを放つのです。 錦綾なす11月の霧島を舞台に行なわれる神秘的な祭事、それが今回ご紹介する霧島神宮「天孫降臨御神火祭」です。ニニギノミコトの御降臨に由来する祭りで、毎年11月10日に高千穂峰頂上と高千穂河原の古宮跡の2ヶ所で行なわれています。
天孫降臨の道しるべとなった火 遥か昔、神々が世を治めていた神話の時代。アマテラスオオミカミの命を受けた孫のニニギノミコトが、天上界から地上に降り立ったとされる天孫降臨神話。その降り立った場所が高千穂峰であり、日本の歴史はここから始まったとされています。 ニニギノミコトご降臨の際に、先導を務めようと途中で待っていたのが国津神(地上にいた神々の総称)であるサルタヒコでした。 この時、暗い中で高千穂峰に降り立つニニギノミコトの道しるべとして火を灯してお迎えしたという故事に由来して行われるようになったのが「天孫降臨御神火祭」の由来だそう。
国家安泰と国民の平安を祈念して 当日の早朝、昔ながらの方法で熾された火をろうそくに移して本殿にお供えし、天孫降臨記念祭を行なった後に、この火を二つに分けて高千穂峰山頂と高千穂河原の古宮跡へと運ぶのだそうです。高千穂河原は高千穂峰の西麓、標高970メートルの地に位置し、13世紀の高千穂峰の大噴火で消失するまで霧島神宮の社殿があった場所。現在は石の鳥居が残り、その向こうに高千穂峰が悠々たる姿を見せています。 高千穂河原から高千穂峰山頂までは2時間ほどの道のり。霧島神宮の神官や氏子たち30人ほどが御神火とそれを移す薪を抱えて、高千穂峰山頂を目指して登ります。一方、夕方になると高千穂河原古宮跡には神官、氏子、一般の参加者ら合わせて200人ほどが集まり、準備を始めます。
夕暮れの高千穂峰に燃え盛る御神火 晩秋の空が茜色に染まりだす午後5時。古宮跡と高千穂峰山頂で同時に神官が積み上げた祈願絵馬に御神火を移すと、荘厳な神事「天孫降臨御神火祭」の始まりです。夕暮れの空が高く燃え盛る御神火に照らされ、神官が祝詞をあげる声が朗々と響きます。笛や太鼓など雅楽の音も山々にこだまして、その厳かな雰囲気に参加者も思わず感嘆の声をあげるほど。他では味わえない神秘的な光景を求めて、九州各地のみならず遠くは大阪や東京などから訪れる人もいるそうです。特に高千穂峰山頂では、水色から茜色、紫、群青色へと刻々と色を変えていく夕暮れ時の空の美しさは格別だそう。
九面太鼓・霧島神楽の奉納も 厳かに神事が終わると、参加者にお神酒やスルメ、餅などが振舞われ、御神火で餅を焼いて食べる人の姿も。高千穂河原の古宮跡では霧島に伝わる九面太鼓や霧島神楽も奉納され、さらなる楽しみも。一方、高千穂峰山頂では火が弱まるのを待って下山を始めます。下山してくる人の掲げるたいまつの火が、闇に包まれた山の斜面にチラチラと見え隠れするのを眺めながら、古宮跡で下山組を待つのだとか。 紅葉が彩る晩秋の霧島で厳かに執り行われる神秘的な祭事「天孫降臨御神火祭」に、皆様も参加してみられてはいかがでしょうか。
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